2002/08の湾岸署
[2002年08月03日(土)]
ピーッピーッ。
「おっ」
青島は部屋の隅の袋を開けてモゾモゾ探った。
「はいはい、ごはんね」
たまごっちを取り出してボタンを押した。
「おめぇ今頃たまごっちかよ」
と言いながらラーメンをすする和久。
「せっかく貸してくれたんだからやんないと」
と青島。
「しかし動きがねぇな」
箸で開けたカーテンの隙間から対象の部屋を見る和久。
「土曜日だから何かあるんじゃないかと思うんすけどね」
たまごっちを見ながら返事をする青島。
「なんで“土曜日だから”なんだ」
尋ねる和久。
青島が振り返り答える。
「ドリカムの歌であるんすよ、決戦は土曜日って」
「へぇ、そうなのか。『決戦は金曜日』なら知ってんだけどなぁ」
と返した和久の手にはドリカムのCDが握られていた。
「そんなん借りてきたんすか」
呆れる青島。
「私物だよ」
「は?娘さんのすか?」
「私物だっつってんだろ」
切れ気味に返事をする和久。
「俺がドリカム聞いちゃいけねぇのか」
「あ、いや。まぁそりゃ自由すけどね」
それを聞きながらカーテンの隙間に再度目をやる和久。
対象が動き出したのが見えた。
「おい、連絡しろ。忙しくなるぞ」
青島は携帯電話をかけながら、和久はラーメンをこぼしかけながら飛び出す。
玄関のドアを開けると、まぶしい光と熱風が二人を包み込むのだった。
[2002年08月02日(金)]
「たまごっちありますけど・・」
「もう遅いよ!」
と怒る警務課の青島。
「じゃあ以上ですね。内張・・・と」
係の警官が書類にペンを走らせている。
「久々すよ。張り込み」
青島は嬉しそうな顔で和久を見た。
「おめぇなんでそんなに張り込み好きなんだ」
呆れる和久。
「腰痛ぇし、旨い物食えねぇし」
そう言いながら和久は腰を叩いた。
「なんか刑事って感じがするんすよ」
と青島。
「なんだ、じゃあいつもは刑事の自覚ないのか。やっぱり」
「やっぱりてなんすか」
軽くふくれる青島。
係が顔を上げて言う。
「はい。ではこちらをどうぞ。期限を過ぎるようでしたら延滞用書類に・・」
「分かった分かった。規則・・だよね」
と青島。
「期限なんてすぎねーよ。そんなに仕事してたまるか」
と和久は吐き捨てたのだった。