2001/06の湾岸署
[2001年06月16日(土)]
一人現場へ歩く青島。
ふと見ると、空き地に白いビニール袋を捨てて去ろうとする若い男がいた。
「ちょっとちょっと」
眉をひそめて駆け寄った青島は若者の肩を捕まえる。
「こんなとこにゴミ捨てちゃダメでしょ。自然に優しくないよ」
と言いながら捨てた袋を拾い
「ちゃんとおうちでゴミの日に捨てなさい」
と男に返す。
何も言わずに俯いている男を、覗き込んだ。
目を見開いてニヤニヤしている。呼吸が荒い。
「どうした?」
と訊くが何も答えない。
仕方なく顔を上げると、電柱に
『覚醒剤やめますか、人間やめますか』
と書かれた警視庁の啓発ポスターを見つけた。
思わず目を見開く青島。
「ちょ、ちょっと!」
乱暴に男からビニール袋を奪うと、中を確認した。
「あぁ・・・」
袋の中には注射器と開封済みの粉袋が入っていた。
「ダメだよ。ほら、そこにも書いてあるじゃない。人間やめますか、って」
青島は悲しそうな顔をして、片方の手に警察手帳が開いた。
するとようやく男は口を開いた。
「人間・・・」
「人間?」
聞き返す青島。
「人間やめられるなら薬でもなんでもやってやる!」
男はそう叫ぶと、走って逃げ出した。
一瞬呆然とする青島。男が離れていく。
「ま、待てっ!」
とようやく叫んで追ったが、すぐに足が止まる。
その視線の先には
「おめぇ、何やってんだよ」
と、男を捕まえた和久が立っていた。
「和久さん!」
と青島。
「始末書一枚、書かずに済んだな。今度奢れよ」
和久は笑っている。
捕まった男は観念したかしきりにすいませんと謝っている。
叱咤する和久。
「謝る先が違うだろ!おめぇが頭下げんのは親御さんにだ!」
途端においおいと泣き出す男。
「人間やめたい・・ねぇ・・・」
と青島は電柱のポスターを再度見つめた。
「なんでぇ」
いつの間にか隣に立っている和久。
「いや、人間やめる方とる人もいるんだなって・・」
悲しそうな青島。
「バカ。こういう奴を人間に生き返らせるのもオレらの仕事だろうが」
と簡単に返す和久。
「あ、そうっすね」
「おめぇも薬やったんじゃねぇか?」
と笑う和久。
「しっかし、暑いな」
と太陽を見上げた。
つられて青島も空を見上げた。
眩しそうに目を細めながら、そしてようやく、笑った。
[2001年06月04日(月)]
「和久さん、やっぱ干からびかけてんすね」
と、書類をめくるたびに指をペロリとなめる和久に向かって、青島。
「おめぇ」
と和久が睨むと同時に青島の後頭部を何かが叩いた。
「いてっ」
右手で頭を抱える青島。
振り返ると雪乃がノートを抱えて立っていた。
「和久さんの代わりに成敗してあげました」
ニッコリ笑う雪乃。
「ご苦労」
と和久も笑うと、また指をペロリとなめるのだった。
[2001年06月01日(金)]
久々の快晴に喜ぶ面々だったが、昼過ぎには汗びっしょりになり皆一様にバテるのだった。