2004/5の湾岸署
[2004年5月21日(金)]
「うひゃあ!」
青島と魚住が軒下に飛び込んだ。
先ほどまで小降りだった雨が急に強くなり、激しく地面を叩いている。
「もう!何が『俺、晴れ男ですから傘なんかいらないっすよ』だよ!」
魚住がハンカチで身体を拭きながら怒っている。
「晴れ男だって台風には勝てないんですよ」
青島は飄々と返事をしてたばこに火を付けた。
「それにほら」
青島が指さした先に、傘が風にあおられて飛ばされないように必死に引っ張っている婦人がいた。傘はその役目を果たしておらず、婦人はびしょ濡れである。
「邪魔になるだけ」
そういってふた口目のたばこを吸おうとしたが、吹き込んだ雨が火を消してしまった。
「うわっ」
さらに濡れる青島。
「経費節減でタクシー控えろって言われたけど」
と青島は魚住の顔を見た。
「やっぱり、この場合は仕方ないよねぇ」
ニヤニヤと顔を見合わせる二人。
ちょうどその青島の視界にタクシーが入ってきたので慌てて手を挙げたが、先ほどの婦人が止めて乗り込んでいってしまった。
「どうにかしてよ、晴れ男」
「晴れ男は関係ないっすよ」
雨足はさらに強くなるのだった。