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真下正義の日記帳 1999年9月号

これは今日の湾岸署に出てくる湾岸署刑事課の真下刑事の日記である。
極秘に入手したものなので、本人には言わないように。
今日の湾岸署日誌を横に並べて読むと二倍楽しい。
というか、多分そうしないと楽しめない。
ただし、記述日の順序が逆なので頑張って見るように。文句は真下に言え。
[1999/9/1]

仕事帰りに東急ハンズに寄ったらなんだか使いやすそうな日記帳を見つけた。
今まで日記なんて付けたことなかったけれど、来年は2000年だしつけてみようかな、と今こうしてペンを走らせている。
まぁでも僕のこと、毎日付けるなんて気負うとダメだろうから、書けたら書くというくらいにしとこう。
いきなり弱気だなぁ。

[1999/9/2]

健康診断の結果が返ってきた。
いつもは仕事にかまけて忘れたふりするんだけど、あの丈夫そうな先輩も怪我することだし、なんだか気になっちゃって行ってきたのだ。
結果は良好。
診断の時には夏ばて気味だったから気になったけど、全然OKでしょう。

[1999/9/3]

雪乃さんを食事に誘ってみた。
「いいわよ」っていうから喜んだのに、「みんなでパーッと」とか言うんだもんなぁ。
先輩も気を利かせてくれればいいのに、すみれさんまで連れてくるし。
なんだか哀しくなってお酒の量が多くなっちゃったみたいで、気が付いたらうちの玄関で寝てた。
先輩が連れて帰ってくれたのかな。
実は今は4日の昼間なのだ。まだ頭がガンガンする。今日が夜勤でよかった。

[1999/9/4]

せっかく書き始めた日記を夜勤だからって三日目にして止めちゃうとそのまま止まっちゃいそうだから、持ってきた。

二日酔いは寝たらスッキリしたけど、なんだかつれない雪乃さんのこと考えてたらむなしくなっちゃった。
ボーッと歩いてたら和久さんに何か言われたけど、よく聞こえなかったな。
そういえば副署長のあたまにたんこぶが出来ていたけど、どうしたんだろう。

[1999/9/5]

おとといの雪乃さんとのデートの時には楽しく飲めなかったから今日の交通課との飲み会は期待してたのに、突然張り込みだって。
森下くんたちは喜んでたけど、期待してただけにガックリ。先輩と一緒になって叫んでた。

[1999/9/6]

今日は非番。
パソコンの調子が悪いのでそれを直していたら一日が終わっちゃった。
あー、もったいない。

[1999/9/7]

署に着いたら万引きしたとかで捕まった女子高生たちがいっぱいでびっくり。
先輩と和久さんは忙しく対応してた。

[1999/9/8]

青島先輩とすみれさんが一緒に休むもんだから交通課の女の子たちはあれやこれやと詮索してるらしく、賑やかだった。
それからすぐ先輩が顔を出したけど、和久さんに引きずられて出て行っちゃった。
特に事件もないのでボーッとしてたら、夜になってすみれさんが窃盗犯を連れてきた。
なんでも90分ケーキ食べ放題に30分しかいられなかったとかで、プンプンしてた。

[1999/9/9]

本店の友達から勝鬨署の警官が万引きして捕まったとかで問題になってるとメールで教えて貰った。
それを署長に言ったらなんだか急にニコニコしてた。
隣とは敵同士みたいなもんだからなぁ。

[1999/9/10]

僕は一応湾岸署では本店から研修に来てることになってるので、定期的に本店に報告書提出に行かなくちゃいけない。
FAXとか郵送にすれば楽なのに、面接みたいなのもあるから仕方ない。
今日もそれで本店に行ったら捜査本部から帰ってきたらしい新城さんと出会った。
久々だったけど相変わらず険しい顔。
すれ違いざまに何か言われた気がしたけどよく聞こえなかった。聞き返すのもいけないような気がしたのでとりあえず笑っておいたけど、あれでよかったかな?

そのことを署に帰って先輩に言ったらえらくビックリしてた。
そんなに嫌いなんだな。無理もないけど。

[1999/9/11]

駅前の傷害事件の現場に行こうとしたら、先輩と緒方くんがグローブ持って出ていった。
明後日の野球大会に備えて練習らしい。
「お前は練習しなくて大丈夫なのか?」とか先輩から言われたけど、先輩は仕事しなくて大丈夫なのか?

[1999/9/12]

通り魔事件だとかで捜査本部が出来る。署長はまたブツブツ言ってた。
先輩はもう運転手専門を決めてかかってるみたいで、あの新城さんの運転手も文句言わずにやるようになった。
一度署に帰ってきたときには厳しい顔をしてたけど、新城さんを送り届けた帰りはニコニコしてた。何か良いことあったのかな。

[1999/9/13]

勝鬨署との対抗野球大会だった。署長同士は仲悪いって聞いたけど、こんな会があるくらいだから意外に仲はいいのかもしれない。
試合結果については書きたくないけど、それじゃ日記にならないから書いておこう。
僕はずっと当然湾岸署のメンバーとして出るはずだった。
二番手ピッチャーだと言われてたのでそのつもりだったのに、こないだの不祥事で勝鬨署のメンバーが一人減ったとかで僕が代わりに入ったのだ。
最初は先輩が行くはずだったけど、勝鬨署の人たちからよほど嫌われてるらしくて、僕が呼ばれた。
「湾岸署から助っ人を貰ったんじゃない。本店からの助っ人だ」とか肩を叩かれて最初はチヤホヤされてたけど、どんどん点を取られてくるとみんなの形相と態度が変わった。
だから僕は二番手ピッチャーのつもりだったんだってば。先発完投するほど体力ないし。
それでもなんとか頑張って最終回の7回までは10-9で勝ってた。
ランナーが出てイヤな予感がしたのだけど、先輩が鼻息荒くバッターボックスに立ったときには絶対抑えてやるって気合いが入った。
はずなのに、打たれた。サヨナラ負け。
お酒の入った署長達は大喜びしてるし、もっとお酒の入った勝鬨署の人たちには「空き地署に帰れ」とヤジられた。

ダルマで打ち上げをしたけど、先輩からは「お前は敵だから端っこね」とか言われるし、雪乃さんは先輩ばかり褒めちぎってるし、あーさんざんの一日。

[1999/9/14]

わーい!雪乃さんと映画だぁ!!
それも雪乃さんから誘われちゃったよぉ!!
嬉しいよぉ!!
いつ行こうかな、何着ようかな、何食べようかな。
あーもう落ち着かない!!

[1999/9/15]

圭子ちゃんが拾ってきた子犬に噛まれちゃった。まだ歯形が残ってる。痛い痛い。
すみれさんが子犬を撫でてるのを見て副署長がなんか落ち着かない風だったけど、犬が嫌いなのかな?
みんなポーピーくんって名前を付けて喜んでいたけど、夕方には飼い主がやってきて連れて帰られた。確かに可愛かったけど、僕には痛かった方がずっと思い出だ。

[1999/9/16]

魚住さんがピーポーくんを被って遊んでいた。
どうしたんだろう。

[1999/9/17]

ショックだぁ・・・。
雪乃さんと映画に行けると思ったのに・・・。
これ以上はもう書きたくない。寝る。

[1999/9/18]

とても蒸し暑い一日だった。
現場から帰ってきて冷たいものでも飲もうと思ったら、自販機は故障。
みんなフーフーいいながらホットコーヒーを飲んでいたけど、僕はそんなに我慢強くないのでコンビニでジュースを買った。
こんな時に壊れるなよなぁ。
コンビニ行くだけでも汗かいちゃったよ。

[1999/9/19]

署長と副署長が暇そうに署内を徘徊していた。
こっちはもう忙しくてあっちこっち飛び回ったいたのにいい気なものだ。
いや、そんなことを書くとこれをもし誰かに見られたときに都合悪いので、やめとこう。
やめとこうっても、これボールペンで書いてるんだよなぁ。

[1999/9/20]

今日は魚住さんが結婚記念日だそうで、僕に「何プレゼントしたらいいかなぁ」と聞くのだけど、まだ独身の僕に分かるわけないでしょっ。
「ネックレスでもあげたら?」と言ったのだけど「それは去年あげた」だって。
見かけに寄らずマメなんだなぁ、魚住さん。

[1999/9/21]

今日は久々の非番。
買い物に行こうと出かけたのだけど、映画館の前を通りかかったから雪乃さんから貰った愛のこもったチケットを使わせてもらった。
映画はもの悲しいラブストーリーだったけど、それを一人で見てる僕の方がよっぽど哀しかった。はぁ。

[1999/9/22]

先輩が大きなタンコブを作ってた。
本人に訊いても何も教えてくれないのですみれさんに訊いてみたら「色ボケしてるからよ」とのこと。
よくわかんないや。

[1999/9/23]

先輩が朝から「オレさ、身体のこと考えてタバコやめるわ」と言い出した。
まぁ一日二箱は開けているから身体には悪いだろうと思っていたけどね。そんなに簡単にやめられるものかしら。
と、思っていたら、ちょっと目を離したスキに休憩室でプカプカ。
「禁煙じゃないんですかぁ?」と突っ込むと「我慢してやめるのはオレの身体のためによくないと思うんだよね」とかなんとか言い訳の時には先輩は口数が多い。
まぁタバコ吸ってる方が先輩らしくていいけどね、第三者だから言えるのだろうけど。

[1999/9/24]

この日記を読み返してみたら、どうも僕のことよりも先輩のことの方が多く書いてる気がする。
彼は毎日なんだか楽しそうで見てる方も飽きないからネタになりやすいんだよね。
ほら、また先輩のことしか書いてない。
ま、いっか。誰が見るわけでなし。

[1999/9/25]

今日は久しぶりにお父さんに呼ばれた。
いつも「お前は刑事なんだから」が口癖で怒られてばかりしたけれど、今日は「ちょっとは刑事らしくなったなぁ」と初めて言われた。
空き地署で鍛えられてますからね。

[1999/9/26]

先輩がソワソワしている。
こうゆうときは何か企んでることが多いのだけど、今度は何をやらかしてくれるのだろう。
何をしても端から見るのはとても楽しい。
警官になっちゃって半年ほどいなかったときはさすがに淋しかったけど。

[1999/9/27]

「モデルガン買ったんだぜ」と、先輩がニコニコして教えてくれた。
拳銃なんて警察学校でイヤというほど見せられたのに、それを趣味にしてるなんて僕には信じられない。
あー、ソワソワしてた原因はこれだったか。
プレミア物だとか言っていたから、そうとう高かったんだろうな。

[1999/9/28]

万引き犯を捕まえる時にケガした人がいるとかで僕が行くことになったのだけど、急に本店に呼ばれて先輩に代わりに行ってもらった。
本店にいくと、「そろそろ本庁に来てもいい頃じゃないかね」と言われたのだけど、「まだ現場を見ていたいです」と答えた。
先輩がいつか「この仕事はね、毎日ドキドキするんだよ」と教えてくれたのだけど、本店に行ってもそんなドキドキしてそうな人は誰もいなくて、その度にやっぱり所轄がいいやって思うんだよね。
ずっとこのままではいられないだろうけど、ワガママが通るうちは言わせてもらうことにしよう。

[1999/9/29]

和久さんが盆栽でなんだか凄い賞を獲ったらしい。
朝から記者みたいな人が来ていたのだけど、先輩と現場に行ってて不在だった。
昼過ぎには戻ってきたはずだけど、夜勤明けで僕は早くあがったので喜ぶ和久さんの顔を見られなかった。うーん、残念。

[1999/9/30]

また袴田課長が変な陶器のジョッキを作ってきた。
前は被疑者が振り回したゴルフクラブが僕の危機を救ってくれたのだけど、今回はそんなのも期待できないから触らないことに決めた。
でも触らないようにしようと思うと余計に気になってしまって、特に僕の席のすぐ後ろに机があるから椅子を引くのにも神経を使う。
いい加減気にするのも疲れたなぁと思った頃に課長の「あっ!」という悲鳴が聞こえてその直後にグワッシャ!という鈍い音。
「また自作ジョッキで何も飲めなかったよぉ」と泣きべそだったけど、みんなは僕と同じようにホッとしてたようだった。
みんなも僕と同じ気持ちだったのかな?なんで??

気が付いたら今日で9月も終わり。
この日記もちょうど一ヶ月だ。三日坊主にならなくてよかったぁ。
また来月も先輩の話ばかりになっちゃいそうだけど、また楽しいことがあるといいな。
僕ももっとドキドキしたい。
Written by かず
2000.1.9
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