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お酒

はじめに(2002/10/27補筆)
これは、1998年当時開設していた私の個人サイトにて公開していた日記の一つです。
この超不定期日記もこれで30本目になる。
大したことも書いてないのだが、まぁいろいろその時あったこととか過去のこととかを記していて、今となってはあまり記憶に薄いことでもちゃんと記録に残っているから日記とは大した物である。
私のサイトはご存知のように頻繁に更新される情報という物がないので、日記でも書かないとお客さんに愛想をつかされそうなので始めたわけだ。
そんな何らかの理由がないと私は日記なんていちいち頻繁につけるような人間ではないので、私自身のためにもある意味良い効果を生んでいる。
将来、結婚する事になったときに嫁さんが過去のことを気にして「目にするのもイヤ」、なんて言われたら丸ごと消してしまうだろうが、そうでない限りは続けていくつもりなので、これからも駄文にお付き合い頂きたい。

こんないい加減な文章でも30本書くとなると結構な時間と労力がかかっているので、実は今回はなかなかめでたい回なのである。
それを記念に祝杯でもあげたいところだが、実は私はお酒が苦手である。

父はよくお酒を呑む人だった。
昼間から仕事もせずに酒をあおるようなタイプでは無かったが、仕事が終われば毎晩夕御飯の代わりにお酒を呑んでいた。
突然思い出したように素面で帰ってくることもあったのだが、そんなときの父は大変寡黙で、独りぼっちでテレビを眺めていたりした。
そんな無茶をする呑み方では無かったと思うのだが、元々強い方では無いらしくすぐに酔っぱらった。
よく母からは「お酒に呑まれたら駄目でしょ!」と怒られていたが、お酒の入った父はすでに天下無敵(うちの中では)の人になっていたのでうるせぇと言い返していた。
ご機嫌になって「お、小遣いでもやるぞ」なんて言ってくれるような呑み方なら歓迎だったのだが、そうではなく、よく家の中で暴れていた。
家族全員、父に何の意味もなく殴られたことが一度ならずある。

私は12歳だった。ある日の晩御飯、家族で食卓を囲んでいた。
父はご飯の代わりにお酒を呑んでいたし、その時母は仕事が遅くなってまだ帰っていなかった。
晩御飯前にわれわれ兄弟3人で大騒ぎして遊んで帰ってきたところで、その興奮も冷めやらない状態だった。
何がそんなに面白かったのか分からないが、何故かみんな笑いが止まらず、ちょっとご飯を口に入れてはそれを思い出して笑っていた。
何度目かの笑いの後、怒鳴り声が私を襲った。

「コラァ!そこに座らんかぁ!!」
髪の毛を引っ張られた私は床に叩きつけられた。
凄い形相で私を見下ろしている酒に焼けた父の顔を見て、そんな状況にあるにも関わらず私は「あ、赤鬼みたいだな」とぼんやり思った。
すると次の瞬間
「分かったかぁ!コラァ!分かったかぁ!」
と悲鳴のように叫んでいる父にボコボコに殴られた。両拳で何度も何度も殴られた。

何が「分かった」なのか、サッパリ分からなかった。
何故殴られたのか、サッパリ分からなかった。
ザックリ切れてしまった口の中とプックリ腫れたホッペをさすりながら、殴られたことへの不条理さと酒への嫌悪感が私の中で芽生えたのだった。

その後も父は突っ走った。
何年か後、何の用だか分からないが、居酒屋から家に電話をかけてきて
「はいもしもし」
と普通に出た弟に
「そこで待っとれぇ!」
と怒鳴って、凄い勢いで帰ってきたかと思うと何発か弟を殴ってまた
「分かったかぁ!コラァ!」
と居酒屋へ帰っていった。
私ほど寛容でなかった弟はそのあと、グレた。

ほぼ毎日こんな具合に酒を呑んでは暴れる父を見て私は、「酒は呑まないようにしよう」と固く誓ったのだった。

で、その後、私がまともにお酒を飲み始めたのは二十歳を過ぎてからだった。
付き合いもあるし、暴れない程度に自分で抑えて呑めば良いだろうと思い、少しだけ呑めるようにはなった。
ただ、いろんなイヤな過去を思い出すのだろうか。呑むと憂鬱になってうつむいて静かになってしまうという、場を盛り下げる呑み方しか出来なくなってしまった。
そんな具合だから自分から呑もうとも思わないし、そもそも呑んでても美味しいと感じない。人からも誘われない。
呑み慣れないからたまに呑むと酔いが回るのが早く、途端に静かになってしまう。
そんなこんなで、結局いまだにお酒は苦手だし、あまり呑めない。

何年か前に新宿でお酒を呑んだ帰り。靴屋さんの前に木村拓也の等身大ポスターがあった。
当時付き合っていた彼女がキムタク好きだったので、 「ウリャ!!」とそのポスターを殴った。 私は芸能人だろうがなんだろうが、彼女が好きな物には嫉妬してしまう人なのだ。店内から店員さん達が「コラァ!」と出てきたが知らんぷりして、去った。
実はこの話、自分ではあまり覚えていない。翌日友達みんながそう言っていたので確かなのだろう。
その時いつもよりも相当量のお酒が入っていたので、お酒を呑むと暴れる血は私にも流れているのだろう。
こういうことも、遺伝してしまうのか・・・。

やはりこれからも、お酒は控えておいた方が良いらしい。


おわりに(2002/10/27補筆)
今はこのときよりは飲めるようになりましたが、やっぱり弱いです。
強くなりたいとも思ってないし。
Written by かず
1998.6.24-2002.10.27
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