映画館
確かにストーリーだけ知るならビデオやテレビで観ても充分だし、逆に何度でも観られるビデオの方が理解出来ると思う。
映画だと、くしゃみをして目をつぶった瞬間や周りの客が気になった瞬間、はたまた隣に座ってる彼女のホッペにキスしたりしている瞬間は少なくともスクリーンからは目が離れているし、洋画なら当然字幕も読めない。邦画にしても、そんな瞬間の台詞などは聞き逃すこと請け合いなのだ。
その点ビデオなら巻き戻せば見逃したところが見られるし、隣の彼女が(もしくは自分が)ホッペにキスでは我慢出来ないくらいに興奮してしまってもリモコンのボタン一つでその場面で止めることが出来る。 一時停止ボタン押下すら出来ないほど興奮度が高まると、映画のオープニングとエンディングしか観てないなんて状態にもなるが、まぁ若い頃には仕方が無いので巻き戻してもう一度見よう。そしてまた同じ場面あたりで同じようになってしまおう。継続こそ力なり(By某ゼミ)。それが青春だ。
なによりもビデオは好きな格好で見られるから楽だ。裸で見てても誰も文句言わないし、お菓子だって食べられる。トイレにも平気で行ける。
そんなわけでいいことずくめで映画館より安くつきお手軽なビデオの方が、わざわざ映画館で観るよりずっといいと思っていた。
何年かぶりに映画館で観た映画が「ToyStory」だった。
そのたった一度がきっかけになって、この四年程で何度も足を運ぶことになる。
その四年間に観た映画を自分自身の記録の意味も込めて列記してみる。 鮮明に順番を覚えているわけでもないので順不同である。 正確には思い出した順、だ。
- トイ・ストーリー
- ツイスター
- スターウォーズ特別編I
- スターウォーズ特別編II
- スターウォーズ特別編III
- インディペンデンスディ
- もののけ姫(二回)
- ノートルダムの鐘
- タイタニック
- 銀河鉄道999
- フィフスエレメント
- マーズアタック
- M.I.B
- スターウォーズ エピソードI(七回)
- マトリックス
- シックスセンス
- バグズライフ
- ノッティングヒルの恋人
- スペーストラベラーズ
- トイ・ストーリー2
- アンドリューNDR114
- ワイルド・ワイルド・ウェスト
- アイアンジャイアント
- もののけ姫(逆輸入版)
- 踊る大捜査線 THE MOVIE (二十五回)※これは論外
何か抜けている気がする(絶対抜けている)が、今思い出しただけでもザッとこのくらいある。
踊る大捜査線を別格にすると、およそ二ヶ月に一本は観ていることになる。
それまでは五年に一本観れば良い方だったので、それに比べればはるかに足繁く通っていることになる。
中には行って損したと思うような駄作もあるが、おおよそ満足している。
何故わざわざ映画館で観るのか。
一番大きな理由はそう、迫力である。映像の迫力、音の広がりはなかなか家では体感出来ないものである。
上の列記した中で特に顕著なのが「ツイスター」である。
これは素人の私に言わせても「迫力」だけの映画である。激しい竜巻の迫力、それだけを楽しむ映画だ。
ストーリーなんて取ってつけたような陳腐なもので、更にどういうストーリーだったかも忘れてしまっているほどだ。
しかしあの竜巻の大迫力は今でも鮮明に記憶している。
あれは映画館の大スクリーンで観たからこその迫力であって、ブラウン管ではとうてい味わうことは出来ない。
もしビデオなんかで観たとしてもちっともつまらない映画なのだ。
「インディペンデンスディ」はストーリー的にも配役的にも好きな作品であるが、それにあの迫力がプラスされて更に素晴らしい印象の映画になった。
ビデオも出ていて実際私もLDを買ったのだが、映画館の迫力を家では味わえないのが残念であり、仕方のないところでもある。
あと、意外に印象に残るのが他の観客の様子である。
たとえば、雑音。観ている最中には迷惑ではある。ガサガサゴソゴソ何かの袋を触っている音。あくびを吐き出したオヤジの息。こそっと隣の人に耳打ちするヒソヒソ声。赤ん坊が自己主張する声。
たとえば、リアクション。激しいシーンが怒濤のように続いた後にピタと落ち着くようなシーンだと、一同の肩の力が抜けるのが分かる。ビックリするような衝撃があれば、全員の頭がビクッと後ろにのけぞる。 楽しいシーンなら笑う。
これらを全部引っくるめて、映画なのである。
ストーリーを理解する、という見方からするとこれらは全て邪魔な物である。 しかし映画を観る、の場合にはおおよそ迷惑でない限り、問題ない。それらも含めて、映画なのである。
そして、他の観客からするとそうして観ている私自身も、その一部なのである。
とか綺麗ごとを言いながら当然静かに観られる方が良いわけだが、映画の印象と言われると上映されている内容だけが印象の全てではないことが分かるだろう。
家で観るのとは全く違う感じ方をする。
おそらく制作者側も映画館で観られることを前提に作ってあるのだから、映画館で観るのが一番良いに決まっている。
踊る大捜査線に関しては、初日の舞台挨拶から観に行った。
オープニングからキャラが一人紹介されるたびに拍手喝采、掛け声までかかった。
ツボはみな同じで、笑う場所も一般とは違う。二十五回も観たが、和久が松の鉢植えを持って歩いているシーンで笑いが出たのはその一回だけであった。
エンディングにはスタンディングオベーションの嵐であったが、一人でビデオで観ていてはスタンディングオベーションなんて出来ないのだ。
さすがに家で観るより費用もかかるし、時間の拘束があるからどれもこれも映画館で観るわけにはいかない。
しかしこのところの映画はなかなか映画館まで足を運ばせる魅力があるものが多い。
もしこれだと思わせるような映画があったら、是非一度映画館に足を運んで観て欲しい。
そしてあなたも、映画の一部になってしまおう。迷惑かけない程度に。
Written by かず
1998.6.15-2000.06.08
1998.6.15-2000.06.08