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やっぱりネコが好き

某テレビ番組のタイトルではない。
本物の動物の猫ちゃんの話である。
私の周りの人は何故か犬好きが多い。
猫はしつけに時間がかかるし、家の柱やカーペットで爪は研ぐし、ひっかくし、確かに大変である。
だか私はそんな非以上に「人間なんてなにさ、ふんっ」みたいな態度がたまらなく好きなのである。
逆に犬の尻尾を振って人間にこびる様子は、確かにそれはそれで可愛い時もあるのだがいまいち受け入れきれない。
餌を貰うときだけ文字通りの猫なで声を出して「ねぇ〜、可愛いわたしにご飯をちょうだ〜い」な態度も実に好きである。私と同じではないか。

ウチにも一匹いる。
ケケという名の長毛のバカネコで、なんとかケケとかいう種類のネコらしいのだが、雑種が混じってるらしいので血統書はない。
もうすっかり歳とったネコである。
ケケもこうしてパソコンに一人で向かっていると「ねぇ遊んでよかまってよなに一人で楽しいことしてんのさ」と声をあげながら足元をワサワサしてくる。
なんだかまって欲しいのかと横腹を突っついて横にコロンと転がしてお腹のあたりをさすってやると、目がうつろになってくる。
しかしすぐ現実に戻るらしくうつろな目が急にパカッと大きくなってこっちを見る。多分そのときのケケはこう言いたいに違いない。
「なんだ、そんなに私と遊びたいの?まったくしょうがないわね、もうしばらくこうしててあげるからもっと胸のあたりを触ってていいわよ」
さっきまで甘えていたのはどっちだよ。
なんだもういいのか、とパソコンに戻るとまた足元に来て「ねぇもうやめちゃうの?なんでなんでなんでよぉ」とゴロゴロする。
どうせサワサワしてやってもすぐ人を小馬鹿にするくせに、と放っておくと今度は勝手にゴロンッとなって
「ほら、あなたの好きなおなかを見せてあげたわよ。触ってもいいわよ★」な風だ。
その色香に負けてしまい結局はその魅力的なおなかにまた手を伸ばしてしまうのだが、二三分もすると
「わたしもう飽きた。寝る」とプイッとどこかに言ってしまう。
こっちが一段落して退屈だからケケと遊ぼうと近づくと
「なによあんたわたしが気持ちよく寝てるのが見えないの?邪魔しないでよね」と追い返されるのだ。
ちょっと腹が立つときもあるが、人間でもそんなワガママ女はどこにでもいるのでそう思えば可愛いものだ。

昔は三匹飼っていて、ジジとタローとサンボという名前の雑種だった。
飼い始めた時期はばらばらで、それぞれの血も繋がっていない。
最初は黒猫のジジだけだったのだが、コンビニの前でぷるぷる震えていた白猫で子猫のタローが増えた。
その頃にはジジはすっかり成猫になっていた。
去勢手術もしてあったので子供を産むことは出来なくなっていたが、ちびのタローが来て母性本能が働いたらしい。
自分はあまりエサを食べずに、全部タローにあげてしまうのだ。お陰でタローはあっという間に大きくなり、ジジの大きさを抜くのにも大して時間はかからなかった。
でもいくらジジのサイズがちっちゃくても大人は大人。母性本能フル活動だ。
大きくなってもまだヨタヨタしてるタローへの教育が始まる。
私の背丈以上ある大きな窓の網戸を伝って、窓の上のちょっとした出っ張りまで上る。
ジジは軽やかに上り、上からタローを見下ろす。
「ほら、あたしがやったように上ってきなさい」
「うん、わかったよ」と言ったか言わないか、タローも網戸に向かって猛ダッシュ。しかしベシャッと網戸に激突。ずるずるとフローリングの床にずり落ちていく。
「まったく、しょうがないわねー」とジジはそこから飛び降りて、再度軽業を披露して忍者のようにシュタッと、上る。
そして「はい、こうやるのよ。さぁいらっしゃい」とタローを見下ろすのだ。
しかしタローはまたもや窓に激突。
結局タローは上へ上ることはこの後もなかったが、教育だけは何度も行われた。
ジジは気付かなかったのだ。タローが自分よりもはるかに大きくなっていたことを。

私の家族はみんなネコ好きで、ケケなんかはわたしの母が「はーい、ママが帰ってくるの待ってたの、そうなの」なんて目を細めて可愛がっている。
私らほんとの子供はずいぶんと大きくなってかわいげもないので、その愛情がすべてケケへ注がれているらしい。
ケケもそれを察してか、母が家にいるときは私たちには目もくれず母の周りをうろちょろしている。
「ケケは可愛いねぇ。ケケもお話しできればいいのにねぇ」なんて、親ばかか、ばか親か。

ところで、何故かネコの言葉は私の中で女言葉に変換されている。
ネコが擬人化したら、ネコ耳を付けた可愛い女の子になるような気がしているのだが、ケケは実は男である。
それもそうとう高齢のネコなので、母が期待するように本当に言葉を喋ろうもんならこうなることうけあいだ。
「おぃ、腹減ったぞ。飯はまだかいの、おばはん」
Written by かず
1996.9.6-1999.7.27
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