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徒然なるままに踊って綴った絵本のお話

とある絵本がある。
旅人が海を小舟でやってくる。岸に着いてそこで馬を買い受け、今度は馬に乗って旅を進める。
周りの風景は村から町へと人も建物も増えて活気を帯びてくる。旅人は見開き2ページ分の何処かにいつも馬に乗って旅している。旅人は街を抜け、だんだんと閑散としてくる風景の中を馬で歩を進め、やがて馬とその地に別れを告げ、次の土地へと旅立って行くのである。
周りでは色んなストーリーが展開している。例えば前のページで結婚式をしていたカップルが次のページで見送られた馬車でハネムーンを楽しんでいたり、最初のページで子供達が川に流した小舟が最期のページで海に流れ着いていたりとか。はたまた手に持っていた風船が空へと飛んでいき、それを負って走る子供が次のページにもそのまた次のページにも登場していたりとか。
私がこの絵本に出逢ったのは小学校低学年の頃。最初は旅人とストーリー通りに旅をして最後まで一覧した。もっともそれも楽しいのだが、お楽しみはその後なのである。この絵本の中には当時読んだばかりのイソップ童話の一場面がパロディのように出てきたり、木々の間に動物の絵が隠された騙し絵があるなど、2回3回と色んな楽しみ方が出来る要素が詰まっている。「あ、ここにトムソーヤがいる」とか、「この風車に向かって突撃しているのはドンキホーテだ」とか言った具合に。
そして、何度も何度も見て全部探し尽くしたかな?と、しばらく絵本は本棚の隅っこへ忘れ置かれる存在となる。私は中学生になり、小学校の授業ではなかった美術の授業というのを受けることになる。色んな有名な絵画の名前を試験勉強の為に覚えたりするわけで。そんなある日、部屋の掃除をしていた私は久しぶりに絵本を手にする。全部覚えてるかな?と思いながら開いた私の目にそれまではただの風景でしかなかった場所が一つの絵画となって飛び込んできた。「これは、ミレーの晩鐘だ」、「あ、こっちはグランドジャット島の日曜日の午後だ!」それだけでなく小学生の時ではわからなかったマリリンモンローやチャップリンの肖像画を見つけたりする。すごいすごい!
更に年月が進む毎に、映画のワンシーンや歴史のワンシーンなど、背景の中にあるその時はただ単にそこにいた人達が意味を持った符号になっていく。自分の中の知識が増えた分だけ絵本を見る楽しみは増えていく。
さて。
私はこの年になってすっかり「ドラマ」にはまってしまった。自分でもびっくりである。
ストーリー通りに一回見て、二回見て、三回見て。
、、、飽きない。
で、何度も見ているうちに今度は背景に目を奪われる。ストーリーを負っていたときはそれで一生懸命でようやく「これはこれの伏線だったんだ、、、」とか「ここで被疑者が出てるジャン!」とか気付きながら見ることとなる。
更に、このドラマならではのハイパーリンク、と呼ばれるものを見つけて楽しんでいるうちに、私はあの絵本の事を想い出した。懐かしくなって本棚の隅から引っぱり出して何度も見てみる。
このドラマもこの絵本も中身が濃い。そのもの自体が質良く出来ていなければ遊び心は受け入れられない。そのもの自体をぶち壊すからである。がしゃがしゃして何が本筋なのかわからなくなってしまう。ほのかな遊び心が構成物のかけがえのない一つとなってその中に存在して、全体で一つの作品となっているのである。




【コメント】

、、、なんてな。
大仰に申し上げましたけど、この小学校の頃から愛読している絵本が何となく「踊る」の楽しみ方と似ているな、と思っただけなんですよ。まだまだハリウッド映画や黒沢映画を見ていない私にとっては先が長く「踊れ」そうです。お友達の外国人にも勧めて「踊る」国際化も謀ってます(笑)
かずさん、一周年おめでとうございます。このようなもの書いてみたので投稿させていただきました。これからもサイトにお邪魔しますので宜しく御願いします。継続していくって大変な力だと思います。頑張って下さいませ^^

【かずさんからのコメント】

どうもありがとうございますっ!
その絵本のタイトルは分かりませんが、踊るの楽しみ方なんかはつい「それそれ!」と言いたくなっちゃうようなコラムでした。
これからも頑張りますので、お暇なときには覗いてやってくださいませ。

Written by サラ
2000.3.24
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