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邦画興行収益の秘密〜踊る大捜査線 THE MOVIEについて〜

※このコラムは私の個人サイトの方で公開している文章で、一般人の不特定多数に向けて書かれています。
今回ここ「踊る大捜査線FANSITE」に載せるにあたって一部改変いたしました。
どこかで見かけた文章かもしれませんが、お付き合い下さい。
元を知っている人は見比べてみるのもいいかもしれません。
私は一度ハマると大変である。
とことんハマる。その後、突然冷める。
たまに冷めないものもある。パソコンもそうだし、パソコン通信時代からインターネットへと続いている総称「通信」。そしてガンダム、アラジン。
もっともガンダムはハマるというよりは、ずっと好き、という程度でせいぜい映画版LDを3枚+1枚持っているというくらいなのだが。 それも通称ファーストガンダムと呼ばれる初代ガンダムだけである。
別にフィギュアを作ったりセル画を持ってたりシナリオを持ってるというわけではないのだが、暇なときには今も観る。
だが、うちの比較的高価なLDプレイヤーはガンダムとアラジンの為に買ったくらいなので、ただ好きだというのにはちょっと違うだろうか。
ディズニー映画「アラジン」はそれこそ100回では効かないくらい観た。
ビデオを買って、観すぎて切って、ビデオを買い直して、それでも飽きたらずLDを買った。その方が結果コスト的に得だろうと判断したわけだ。
そのくらいハマる。冷めずに今も続いている。
そしてこの、サイト作りも冷めないものの中の一つだろう。
個人サイトを開始した当初はまだまだ日本語ページも少なくて、JavaScriptという言葉が浸透するよりも前にうちのページで使ったものだから、大した内容も無いページにそういう技術だけを見に来る人が多かった。
雑誌や他のサイトで紹介される時も「最新技術ならここで」とサイトの内容には殆ど触れられなかったことからも分かる。
まぁそんな古き良き時代からはまっているのだ。

で、俗な言い方で今のマイブームと言えるものが「踊る大捜査線」である。

踊る大捜査線て何よ何が踊ってるのよ大捜査線てどのくらい大きいのよ世界を股にかけたりしてるのねぇねぇ、と言う人はまず公式サイトをごらんになると良いかと思う。私からあえて説明はしない。
ただ、なにも踊ってはいないし世界を股にかけるどころか、捜査線は実に狭い。
昨年のはじめ頃だったろうか、突然波が押し寄せてきた。きっかけは一昨年の年末に放映された「歳末特別警戒スペシャル(以下歳末SP)」であった。
それまで私は本編の放送は一度も見たことがなかった。正確に言うと一度は見た。第一話のはじめ15分だけだ。15分見てチャンネルを変えてしまった。
なんとなく面白みがなかったのもあるが、一番の原因が「織田裕二が嫌い」だからであった。いかりや長介も嫌いだったし、深津絵里もそうだった。
そんな登場人物がガンガン出てくるドラマを15分も見ていられるほど私は人間が完成されていないし、たとえ人間が完成していたとしてもそんな努力をたかだかテレビにしたくなかったので当然、チャンネルを変えた。
そんな私が何故歳末SPを観たかというと、いつだったか歳末SP前に本編の総集編「湾岸署事件ファイル」を放映したのだ。
友人が「踊る大捜査線は毎週見逃さない」と言っていたのを思い出したからであろうか、何故かそれを観ることになった。
そして、ハマった。

感染して一度発病すればあとは一気に進行した。
歳末SPは勿論観たし、その後になって夕方にやっていた再放送は全話録画した。
その後ビデオで販売されている本編全話を観て、再放送は相当それも一番面白いところを端折ってあることに気付いて憤慨した。
「初夏の交通安全スペシャル」「深夜も踊る大捜査線」「秋の犯罪撲滅スペシャル」を経て「踊る大捜査線 THE MOVIE」へ。
織田裕二もいかりや長介も深津絵里も嫌いだったが、青島俊作に和久平八郎に恩田すみれに、恋をした。
そしたら織田さんみるたびにかっちょいいと思うようになり、いかりやさんは演技が渋いなぁ、深津絵里はホントに可愛いなぁ、と思うようになった。簡単な人間である。洗脳されやすいタイプかもしれない。
映画公開直前までビデオを切れるほど繰り返し観た人間が、舞台挨拶を徹夜して見に行ったとはいえ、一度きりで満足できるだろうか、いやできない。できるわけもなく、するつもりもない。
ということで、これまで通算20回、観た。
同じ映画を2回観たというのはもののけ姫で一度体験したが、それ以上というのは当然初めてだ。
2月19日にあった「織田裕二ライブ」にもしっかり行って(といってもぎりぎりでチケットを譲ってもらえたからだが)、その時に「映画の方もそろそろ700万人に届きそうな勢いらしいっスよ」とのことだ。
面白いから700万人でも少ないくらいだ、と私などは勝手に思っている。

と、踊る大捜査線遍歴を披露しつつ、ここまでで既に1280x1024の解像度で見ても一ページ分あるのだが、ここまではただの枕である。
このコラムのタイトルからでも想像は十分につくと思うが。
で、本題。

「踊る大捜査線 THE MOVIE(以下、踊る)」がどのくらいの収益なのか調べてみた。
1998年度の邦画興行成績は1位であった。ぎりぎりでボケモンを抜いた。
歴代興行成績(正確には配収成績)となると、以下の通りである。(今日現在・一部推定)
肝心の踊るだけが適当である。今も上映中なのでハッキリしないのだ。(※これは2月の時点である。今でも上映中なのでやっぱりハッキリしない。)
一応50億円で計算してみた。実際にはもう少しあると思うが少な目にとってみた。

順位作品名配給会社公開年配給収入
1もののけ姫東宝1997113億円
2南極物語日本ヘラルド
東宝
198359.5億円
3子猫物語東宝198654億円
4天と地と東映199051.5億円
5踊る大捜査線 THE MOVIE東宝199850億円
6敦煌東宝198845億円
7ポケットモンスター ミュウツーの逆襲東宝198841.5億円
8ビルマの竪琴東宝198529.8億円
9探偵物語/時をかける少女東映198328.04億円
10紅の豚東宝199227.6億円


と、こんな感じである。
どうだろうか。妥当だと思われるだろうか。

私は全く思わない。
私の周りに踊るを観た人はたくさんいる。しかし、私の知人で敦煌を観た人間なんていないし、それだけ売れたのなら私もストーリーくらい知ってても良さそうだが全く知らない。
タイトルから中国のお話なんだろうな、とは分かるが。
南極物語はタロとジロが有名なのでなんとなく理解できるが、子猫物語ってなんだ。まぁ猫が出てきて冒険でもするのだろうか。

と、主観だけで計算しても踊る贔屓になってしまってどうしようもないので、客観的に分析してみる。
簡単なところだと、ビデオの販売本数だ。
当然それだけ映画がヒットしたのならビデオだって売れるはずだ。
現にタイタニックやもののけ姫はビデオの販売本数も記録的に伸ばしている。
正確なデータが見つけられなかったので表にできないのが残念だが、結論を言うと上位の映画は全くビデオは売れていない。
確かにうちの近所のレンタルビデオ屋にも貸し出し中になっているところなど見たこと無いし、うっすらホコリがかぶっているほどだ。

例えば「天と地と」は配収50億円と数字上は大ヒットであったにも関わらず、ビデオの販売本数は7万本に満たない。
一方国内配収30億円だった「ダイハード2」でもビデオでは15万本以上売り上げている。
邦画15位で配収20億円の「魔女の宅急便」でさえ12万本以上の売り上げがあった。廉価版も出たのでこの数字はもっと伸びているだろうと思われる。(100万本近くは売れてると思う)
これはどういうことだろう。

それぞれの年代を見ていただければ分かる。
80年代後半から90年初頭。
みんなニコニコして、田原俊彦扮する徳川先生も小学校の先生のくせに毎日DCブランドを着ていた。
何故か林の中に一億円が捨てられていて、毎週末になると小市民達が近くの林の中を意味もなく下を向きながらブラブラしていた。
そう、バブルだ。

バブル期でどこの会社もお金が余っていた。
銀行は余りすぎてもってけ泥棒状態でお金を貸しまくった。で焦げついて今の不景気につながっている。
自分たちで勝手にばらまいて、挙げ句に「銀行がつぶれるのはマズい」なんて政治家が言い出して、税金が使われたりタバコが高くなったりお茶っ葉がダイオキシンだったりピカチュ○が目からビーム出したりするわけだ。
「東京都知事の青島です。青島刑事とおんなじ名前の青島です。」で有名な青島サンも不景気対策にサジを投げて降参したり。(※ホントに降参しちゃった。)
と、今の不景気の諸悪の根元、バブルだ。
そういう時期に公開された映画が上位にランキングされている。

余ったお金をそのままにしておくと税金が高くなる。
ちょっとでも税金が安くなるように使わなければならない。
固形のものに投資すると償却するのに何年もかかる。
そんな時に映画会社が「うちの映画に投資しまへんかー」とふっかけていったわけだ。
映画なら1,2年で償却してしまう。 大量に前売券を購入して社員にでも配れば福利厚生の一環にもなる。 単価が安いから金額の調整もしやすい。
それで大量に前売り券が売られたわけだ。
そうして出た前売り券も製作時の出費を上回ることはほとんどなかったようだ。お陰で税金対策になるわけだ。
更に文化的な物に出資したということで企業イメージのアップも考えたのであろう。
協賛会社が沢山いた。

例えば敦煌の場合、敦煌動員委員会なんてものが作られた。
協賛各社から何人かずつが来て、各社の関連企業へと大量に前売り券を売りさばく組織だった。
そのお陰で公開前に既に配収30億円は確定していたという。

大作映画と呼ばれてどれだけ費用をかけて製作しても、タダでチケット貰っても、面白くなければ観ない。
で、結果、誰も見ていないのに配収成績だけがいい映画、が出来上がったというわけだ。
当時安チケット屋でも相当数だぶついていた。

映画、特に邦画の成績を観客動員数で表している数字は少なくともインターネット上には存在しない。
前売り券がそれだけの数出ている以上、それなりに観客動員数は多いであろうが、それなりでしかない。主観では販売されたチケットの半数の人間が観ていれば良い方ではないかと思う。
配収成績と観客動員数の順位には差がありすぎて、それで観客動員数を公表できないのではないだろうか、と勘ぐっている。
もし観客動員数の歴代ランキングデータがあったら私にも教えて頂きたいのでメール等で宜しく。

この不景気に700万人動員している踊るは、おそらく観客動員数では邦画2位くらいではないだろうか。
時代による映画チケット代の金額差を差し引いても、だ。
その証拠にうちの実家の方では南極物語は近所の公民館でたった3日上映されただけだった。
天と地との劇場はガラガラだった。

上の表の中で動員人数がハッキリ分かっているのは踊るともののけ姫くらいであり、もののけ姫はなんと1324万人が劇場で観たということだ。
これだけヒットしている踊るが700万人いくかどうか、と言われているくらいだからもののけ姫の凄さも理解出来る。
もっとももののけ姫の方は一年前後劇場で公開されていたので、まだ6ヶ月そこそこの踊ると比べようも無いのだが。
まぁそのあたりは万人受けするものとターゲットがある程度限定されるものとの違いであろう。

というわけで、私が勝手に「踊るは邦画歴代二位の映画だ」と一部で言いふらしている理由を書いてみた。(※当然いまだに言いふらしている)
前売り券のカラクリは、知ってる人は知っている有名な話だ。
上の情報の全てが正しいものであるとは言い難いので(他人からの伝聞も含まれているため)鵜呑みにはしないで欲しい。
が、ほぼ真実に近いのではないかと自負している。
あと、上位にある作品を好きな方にも一応お詫びしておきたい。ただ、これらの作品に対する思い入れは完全な主観であるので、文句言われても変わらない。

さて、この踊るは映画の賞というものを殆どとっていない。
例え映像が綺麗だろうが音楽が素晴らしかろうがストーリーが良かろうがヒットしようがすまいが、テレビあがりの映画は賞が取れないのだ。
これまでいろんな映画が賞を取ったが、一度もその映画を楽しいと思ったこともないし、逆にヒットする映画は賞はとれないみたいだ。
昨年のもののけ姫くらいが例外だろうか。
もっとも映画がヒットしていないのだから賞ぐらいあげなきゃ可哀想だと私は思っている。
ちなみにカンゾー先生を観たと言う人は私の周りには一人もいない。
(※アカデミー賞の結果等と照らすと実に皮肉なコラムになっている。コレを書いた時点ではアカデミー賞最優秀は決まっていなかった。)

まだ「踊る大捜査線 THE MOVIE」を観てない人は是非観て欲しい。笑えるし泣く人は泣けるし、楽しい。
舞台挨拶で二度三度と観て欲しいと織田裕二が言っていたが、私も同感だ。
20回観ろとは言わない。しかし少なくとも一回目に観た時と二回目に観た時とでは感想が違う映画だ。

小難しいことを考えながら観ている映画評論家より、一般人の感想の方が、私にはアテになる。
そして、700万の人が観ているということが一般人の一番の感想なのである。
Written by かず
1999.2.27 - 1999.4.22
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