odoru.org

1999/10の湾岸署

[1999年10月31日(日)]

今日は年に一度の制服支給日。
「なんでこんな時期なんだ?衣替え前にやるんじゃないの?」と青島はブツブツ言っている。
「まぁいいじゃない。ただでスーツ貰えるんだから」とすみれが青島を見上げて言う。
「あ、すみれさん。今度はひどいことしないでよ。去年のスーツ着られないよ、あれ」
「何言ってんの。ホストクラブで嬉しそうに着てたって、聞いたわよ」
「くそっ、真下だろ・・」
「ううん、雪乃さん。すっごくショックだったみたいよ〜」
「・・・・」何も言えなくなった青島。

[1999年10月30日(土)]

「昔ねぇ私青島さんに似てるって言われたのよ。まったく失礼しちゃうわ」
と、夏美と圭子が笑いながら歩いていったが、すれ違ったのがちょっとムッとした青島だということには気が付かなかった。

[1999年10月29日(金)]

今日は青島はすみれとデート。青い芝の広がる公園へ。
すみれの手作り弁当にワインのお洒落な昼食。
心地よい風とワインの酔いでいい気分になると、なんだかトロンとなってきた。
「ほら、青島くん。眠くなっちゃったの?ここで寝る?」と膝をポンポン叩いている。
「う・・うん」とすっかり膝枕される青島。
「あぁいつものすみれさんと違うな・・・」なんて朧気になっていると、すみれの顔が近づいてきた。
「すみれ・・さん・・・」心もちあごを上に上げる青島。
するとすみれの口が・・・大きく開く。え?なに?うわっ、食われる!と青島が思った次の瞬間。
パクッ!
眼を開ける青島。その頭に食いついているのは、ピーポーくん。そしてここは仮眠室。
コーヒーをカップに注ぎながら談笑していた真下と魚住はすぐそばのドアの向こうに
「なんでこんなところにこいつが置いてあるんだっ!」
とちょっとひっくり返った叫び声を聞いた。
「先輩、今日も元気ですねぇ」
「青島くんは叫ぶのが仕事みたいだよね」
二人は同時にコーヒーをすすった。

[1999年10月28日(木)]

「雪乃さんよぉ」コーヒー片手に和久が言う。
「お前さん、何で雪乃さんなんだ?」
「はぁ?」ついに和久さん・・・始まったな、とその瞬間雪乃は思った。その聞き返す雪乃の声が刑事課中に響いたので、みんなも何事かと寄ってきた。
「いや、なんで雪乃さんは雪乃さんって呼ばれてるんだ?」和久は真面目な顔をして訊いている。
「そういや病院の先生や看護婦まで雪乃さんって呼んでたなぁ」青島は遠い目をして記憶を掘り返した。
「僕は先輩が雪乃さんって呼んでたから、つい・・」訊かれてもないのに真下も答える。
「本店の人達はフルネームで呼んでるわねぇ」とすみれ。
「柏木さん、って呼ぶ人は一人もいねぇなぁ。雪乃さんの方が呼びやすいからかなぁ」と、コーヒーに口つけながら和久。
「そうですねぇ。でもそれだけ親しまれてる感じがするし、嬉しいですよ」と雪乃がニッコリ答える。
すると交通課から
「柏木さん!」
みんな振り返り同時に瞬間ギクッとなった。
「あなた刑事になったのねぇ」と言っている後ろで篠原夏美が口を開いた。
「桑野さん、遊びにきてくれたんですよ」と嬉しそうだ。
「遊びに来たんじゃないって言ってるでしょ。ほら行くわよっ」と何故か篠原を従えて歩いていく桑野。
「一人いたねぇ・・」と、それを遠く見送る魚住は呟いたのだった。

[1999年10月27日(水)]

すみれが捕まえてきた万引き犯と、武が連れてきたスリ犯が、双子の姉妹だった。
「双子は似るっていうけど、ああいうのは似なくていいんだけどねぇ」と真下は呆れ顔。

[1999年10月26日(火)]

朝、署の入り口で出勤してきた青島と夜勤明けの真下がすれ違う。
「あっ、先輩。またそのヨレヨレのコートの出番なんですね」
「そっ。また風邪ひいちゃ大変だからね。早めに出してみたよ」
コートの襟の部分を両手で掴んで縮こまって見せる。
「先輩がそれ着てるのを見ると『あぁ先輩の季節がやってくるっ』って感じがしますよねぇ。」と真下はニコニコしながら帰っていった。
それを振り返る青島。
「なんだ?オレの季節って・・」

[1999年10月24日(日)]

青島が元気に出勤してきた。
ニコニコして
「看病ありがとね、すみれさんっ」ポンと肩を叩く。
振り返ったすみれは大きなマスク。コンと小さな咳を一つした。
「もう!昨日青島君が私に向かってコンコン咳してたからうつっちゃったじゃないの!」
熱っぽいのか、顔も赤い。風邪とマスクのせいで怒りの迫力も半減している。
「あー、それで昨日怒って帰っちゃったんだぁ」と呑気な青島。
「あー、それで・・・」真下と魚住は大きくうなづいて納得。
「?」青島とすみれ。

[1999年10月23日(土)]

青島が風邪をこじらせて休んでしまった。
身体を動かすのも困難らしく、すみれが看病に向かった。
半日ほどしてすみれは帰ってきたが、なんだか頬は赤く染まっているしどうにも落ち着きがない。
真下や魚住がチラチラとすみれを気にするが、しかし誰も何があったのか聞けない雰囲気である。

[1999年10月16日(土)]

「何をやってるんだ」
ボーッとしていた緒方がビクンとする。どこからか森下が出てきて敬礼する。それで我に返った緒方も森下を押しのけるように敬礼。
「ご苦労様ですっ」二人の声が合う。
「何をやってるんだと聞いている」ムッとしているのは新城である。
「青島さんが・・・」指さした向こうから顔を出すのは青島。
「あ、新城さん・・・」
「よっ、よく働くなぁ」青島の後ろから和久も顔を出す。
新城の後ろに群を成していた刑事たちがワッと駆け寄っていく。
「慌てないで。もう大丈夫ですよ」青島が刑事たちをなだめるように少し大きめの声を出した。
和久が腕を組んでいる被疑者らしき男を囲むように立つ刑事たち。
青島はゆっくりと新城に近づき、口に片手を当てながら小声で「彼女にフられちゃってカッとなったんですって。話したらすぐに大人しくなりましたよ」
と横にニッと一度口元を伸ばして、新城の横を過ぎていった。
しばらく前を見たまま黙っていた新城だったが、和久も肩を叩きながら横を過ぎていくと、パッと振り返って青島を見た。
すぐ横で立っていた森下と緒方は、その瞬間新城が舌打ちしたような気がして、思わず目を合わせたのだった。

[1999年10月15日(金)]

捜査一課のお出ましだ、と袴田が叫んでいるのを背中に刑事課を飛び出ていく青島。
その後を追うのは、和久。
深夜になったが籠城はまだ続いているのだった。

現場についた青島。野次馬をかき分けて立入禁止テープをくぐる。
「ご苦労様ですっ」と敬礼したのは緒方巡査。
「ご苦労様の毎日だよ」と青島の背中から和久が顔を出した。
「あ、和久さんも来たんすか?」
「なに楽しそうな顔してんだよ・・ったく」と青島の肩をポンとつく。
二人が睨んだ窓にはカーテン越しに犯人らしき影がうつる。
「よしっ」とさっきまでとは違う顔になった青島が歩き出した。
ちょうどその時新城の乗る車が着いたことは、まだ知らなかった。

[1999年10月14日(木)]

人質をとった立て籠もり事件が発生。いまだ籠城中。
当然の事ながら署内もざわついていて、本店から人が来るらしいだのと言っている。
それを聞いた署長は相変わらず渋い顔。
青島は妙に気合いが入った顔をしているが、和久にたしなめられている。

[1999年10月13日(水)]

変なおばあさんが湾岸署に乱入。
一日署長にまでなってしまう。森下巡査が子守役。
勝手に暴走して、署長・副署長・袴田も手を焼く。
最後にいよいよ賞状を渡すなんてハメになってしまったが、その賞状をみてふと署長の頭には篠原夏美が浮かんでいた。

[1999年10月12日(火)]

和久からの、うちに盆栽を見に来い、という誘いをずっと適当に理由を付けて断っていた青島だが、そろそろ言い訳のネタにも尽きてきたし賞も獲ったことだから、行かなきゃいけないだろうなと思っている。

[1999年10月11日(月)]

魚住が早退した。
昼食後、トントゥの首が取れてしまっているのを見て不安になった魚住が家に電話すると、アンジェラが倒れてしまっていたのだ。
慌てて帰る魚住を見送るすみれ。
「あれでキャリアだったらねぇ・・」
と呟いたのを、青島は確かに聞いた。

[1999年10月10日(日)]

真下がコンコンと咳きこんでいる。
青島と魚住は鼻をグスグス言わせているし、袴田と中西と武は風邪で休んでいる。
が、すみれと雪乃はまるで元気で
「まったくだらしないわねぇ。ここの男どもは」
と息巻いている。

[1999年10月09日(土)]

署の前で事故。
凄い音だったのでみんなして外に出たのだが、音の割には大した事も無く、電柱にちょっとかすった乗用車のミラーが大破しただけだった。
が、降りてきた運転手は、署長の奥さん。
それを見て慌てた署長
「ほら、入った入った。見せ物じゃないんだよ、まったく」

[1999年10月08日(金)]

傘立ての傘が溢れんばかりになっている。
雪乃がそれを見つけて整頓していると、「波子」とネームタグの書かれたピンクの花柄の傘。
後ろからソッと現れた袴田が素早い動作でその傘を奪っていった。

[1999年10月07日(木)]

本店から届いた指名手配の似顔絵が副署長にそっくり。
誰かとすれ違う度に顔を隠していて
「それじゃなおのこと怪しいっすよ」
と青島に突っ込まれていた。

[1999年10月06日(水)]

休憩室の自販機にホットコーヒーが並び始めた。
それを見た青島はコートの準備に余念がない。

[1999年10月05日(火)]

休憩所のマッサージ椅子で回収した料金を全て寄付にまわすことに決定した。
途端にみんなが使い始めるが、真下は肩が凝らない体質なので辛そう。
和久はお金は入れるもののいやな想い出があるのでいつも代わりに青島を座らせている。

[1999年10月04日(月)]

雪乃のピアスがなくなる。
みんなが大騒ぎしてると休憩室からノソノソやってきた和久が
「チャラチャラしてっから無くすんだよ」
などとブツブツ。
青島が机の上の和久の帽子をヒョイとめくる。
「あ、あったよ。雪乃さん」
和久は苦笑いしながら、どこかへ逃げていった。

[1999年10月02日(土)]

真下がパソコンの相性診断に凝っている。
「なんだ、30%?」覗き込んだ青島が言う。
「いいんですよ。どうせ気休めなんだから。」
ノートパソコンの蓋を閉じながら、少しふくれる真下。
「そんなんじゃ気休めにもなってないじゃない」と軽く言い捨てて休憩室の方へ口笛付きで去っていく。
青島の軽い言葉が真下には重くのしかかり、顔に縦線を引いていた。

[1999年10月01日(金)]

青島が深刻そうな顔をして肩を落としている。
聞いちゃいけないと思ってしばらく何も聞かないでいたすみれだったが、とうとう
「どうしたの?」
チラリとだけすみれを見る青島。
(あ、やっぱり聞いちゃいけなかったんだ)とすみれが後悔した瞬間、ボソッと
「・・・買ったばかりのモデルガン、壊れちゃった・・・」
すみれは違う意味で聞かなきゃよかったと思った。

Copyright © 1999-2004 かず, All Rights Reserved.