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突然だが今回は少し怒りを含んでいる。

私は通勤にバスを使っている。
ローカルな話になってしまうが、保谷〜三鷹(or 吉祥寺)行きのバスを使っている。 職場は荻窪なので中央線へ乗り換えである。 今回の話は電車ではなくバスの方である。

うちの田舎のバスはバス停間がとても離れている。 こう書くと2、3km離れているように聞こえるが、500mくらいである。 恐らくもっとバス停間の距離が離れている地域もあるであろうが、この「とても」は、私の今住んでいるところに比べて、ということである。 なんだか遠回しな言い方をしてしまったが、今使っているバスのバス停間は非常に短いのである。バス停間を歩いても5分とかからない。
私の使っているバス停から2つ先のバス停だと始発場所の違う三鷹行きのバスにも乗り継げる。 そのバス停を通るバスの数は私の使っているバス停を通るそれの倍にまでなる。
ということで、せっかちな人はわざわざ先のそのバス停まで歩いて行く。

朝、いつも同じ時間に居合わせるおばさんがいる。 その人はホントにせっかちで、そんなに急いでいるならもうちょっと早く起きて一本前のバスに乗れば良いのに、と思うのだがいつも同じ時間に来て、バスの来る気配がないと見るやいなや先のバス停まで歩いて行くのである。 4つ先のバス停だと更にバスの数が増えるのだが、そこまでも歩く。 無事タイミングよく捕まえられれば良いのだが、金曜日の朝は歩いている間にバスに抜かれてしまった。 そのバスに私は乗っていたわけだが。
わざわざ歩いているのに、ボーッと待っていただけの私に抜かれそうになるおばさん、朝のジョギングには早すぎるペースで走る、走る。でもさすがバス、なんなく抜かすのである。 しかしバスには使命があった。バス停で待っている客は乗せなければならないのである。 わざわざ太字で書くこともない。当然である。 その当然の使命のために次のバス停で停まった。 すると例のおばさん、凄い形相で追いかけてきたのだ。 仕事に忠実な為に人情のない東京のバスも、さすがにその形相に負けてしまったのかほんの数秒ではあったが、そのおばさんが乗るのを待っていた。 で、おばさんダッシュで駆け込む。間に合った。

別にそのおばさんに恨みがあるわけでないので(せっかちな人は苦手だが・・)それはそれで良い。だがその後がいけない。
わざわざ待ってくれた優しい運転手さんにお礼の一言も言わずに、定期券を鞄からちらっと見せただけでプイッと座席に座ってしまったのだ。 「ちゃんと定期券見せて下さい」と運転手さんはおばさんを叱ったのだが、実は運転手さんが言いたかったのはおばさんに聞こえない程度の声でボソッと言った「わざわざ待っていてあげたのに・・・」であろう。
する方にしても、礼を言われる為にした事ではない。 綺麗な言い方をすれば「優しさ」である(運転手さんは形相に負けただけかもしれないが)。 礼の一言を言って間違いでない。もっと言い切ってしまえば絶対に礼を言うべきである。
実はこの日、どういうタイミングなのか、そういう礼を言わないおばさん(おばさんがそうだと言うわけではないが、この日はそうであった。)を4度も見かけたのだ。 いつものおばさんだけなら、ああこういう人もいるんだ、で済むのだがこうも出会うと「日本人は礼儀を忘れたのか」と思ってしまう。

このバスの話に限らずとも、せっかく日本語にも「ありがとう」という言葉があるのである。 「すみません」だって良い。 あまり好きではないが、「あ、どうも」でも一応(ホントに一応だけど)礼にはなるはずだ。 それを一言も何も言わない、とはどういう気持ちでいるのだろうか。 言い過ぎて悪い言葉ではない。
今の日本人には「ありがとう」が足りないと思った。

親しき仲にも礼儀あり

親しくない人には礼儀はいらない、という意味ではないはずだ。
自省も込めて。
Written by かず
1996.11.10
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